西川佐織氏インタビュー | ドレッシングのギフトは京都祇園のエマドレ | Shop Aperio">
紙加工に携わって100年近い歴史を持つ西川紙業の四代目、西川佐織氏。伝統的な技術を守りながらも、海外経験を経て気づいた日本の美意識を世界に発信する取り組みや、地域活性化への貢献など、広い視野で活躍しています。西川氏のこれまでの歩み、そして「エマソルト」「エマドレ」に感じた魅力を語ってもらいました。
──西川紙業の歴史や事業について教えてください。
創業は大正後期と聞いています。祖父母のときに高知県から京都に来て、当初は家族経営という感じだったものを、父が会社として整えました。機械を導入して色紙の大量生産を始めたのですが、これは当時の業界では画期的だったようです。その後、父が30代前半で闘病生活に入ることになり、父の他界後は母が30年間社長を務めました。私が社長に就任したのはつい最近のことです。
主な事業としては、色紙や短冊、御朱印帳、写経用紙、和本など、主に和紙を中心とした紙製品を製造しています。お寺や神社関連の仕事が多いのですが、最近では有名ブランドやディズニーの商品なども手がけています。
──西川さんご自身の経歴をお聞かせください。
私は若い頃から海外に行きたいという思いが強かったのですが、父が病気になってしまったこともあり、なかなか実現できませんでした。それでも念願かなって、大学卒業後に1年間カナダのバンクーバーでワーキングホリデーを経験しました。そのときは日本人向けのツアーガイドとして働きました。
──カナダでの経験は、その後の人生に影響を与えましたか。
はい。実は私、当初はカナダに永住したいと思っていたんですね。でも、外から日本を見たときに、日本人の美意識の高さに気づいたんです。例えば傘。カナダでは「雨に濡れなければそれでいい」という考えの人が多かったんですが、日本人はすごくきれいな傘をさしたりするじゃないですか。四季がはっきりとある国に生まれたからか、繊細な美意識があると感じたんです。
次第にそういったものを世界に発信したいと思うようになり、平成7年頃に帰国して、家業である西川紙業に入社しました。最初は現場の作業から始めました。社長に就任した今は営業に出ることも多いですが、エプロンをつけて職人仕事をしているほうが落ち着きますね。
──帰国してから経営者になるまで、どのような困難がありましたか。
入社してからは、本当に様々な困難に直面しました。時には、会社の存続にかかわるような局面もありました。そういった壁を乗り越えていくうちに、会社と家族を守るという決意が芽生えていったんです。
特に大変だったのは、職人さんたちとの関係ですね。私が帰国して会社に入った当初は、新しいことを始めようとすると職人さんたちから反対されることが多かったんです。新商品の開発や新しい取引先の開拓など、私が提案することに対して否定的な反応が返ってくることが少なくありませんでした。
──職人さんたちとの信頼関係はどのように構築していったのでしょうか。
時間をかけながら少しずつ、ですね。大きな転機となったのは、京都府の「知恵の経営」認定を受けるための報告書作成に取り組んだことです。プログラムに沿って自社の強みと弱み、そして歴史を分析していく中で、長年会社を支え続けてくれていた職人さんへの深い感謝の気持ちが芽生えました。もちろん感謝はしていたつもりでしたけど、私の感謝は全然足りなかったんだなということに気づいたんです。
私の接し方が変わったことで、職人さんにも変化がありました。展示会に出展したいと言ったときも、職人さんたちは積極的に協力してくれるようになりました。以前ならそうはならなかったと思います。でも彼らだって、本当は自分たちの技術を伝えたい、残したいという思いが強いんです。それが私の思いと重なるようになり、今では一緒に前に進むことができるようになりました。
──最近の新しい取り組みについて教えてください。
工場見学とワークショップを始めました。私たちの技術を直接お客様に見ていただき、体験していただく取り組みです。特に海外からのお客様に好評です。ドイツのお客様から、「小さな会社だけど、すごい技術が詰まっているね」と言っていただいたこともあります。ドイツにはマイスター制度があるためか、ものづくりにかける想いに共感してもらえたようです。
また、自社敷地内にショップをオープンして、一般のお客様に向けた商品販売も始めました。今までは主に対企業がメインでしたが、直接皆様に、私たちの製品をお届けできるようになったんです。
クラウドファンディングで御朱印帳を制作するプロジェクトを立ち上げたときも、たくさんの方々にご支援いただくことができました。最近は海外の方も御朱印を始められているので、できるだけそういった方々に届くようなアプローチを心がけています。
──紙加工業界の未来についてはどのようにお考えですか。
これからは、海外展開にも力を入れていくべきだと思いますね。日本の人口が減少していく中で、海外市場は大きな可能性を秘めています。また、若い世代の育成も重要な課題です。昨年から美大生のインターンシップ受け入れを始めました。若い感性と私たちの技術が融合することで、新しい価値が生まれると期待しています。
私は、紙加工の価値をさらに高めていきたいんです。私たちの仕事は、単に紙を加工するだけではありません。お客様の要望を形にし、時には目に見えない思いまで紙に込めていくんです。だから、たくさんの方々に工場見学やワークショップに参加してほしいですね。紙加工の技術に間近で触れることで、普段何気なく使っているものの見え方が変わると思います。日本の伝統技術の素晴らしさを感じてほしいです。
──「エマソルト」と「エマドレ」を試された感想はいかがでしたか。
まず「エマソルト WHITE WINE」を唐揚げに使ってみたのですが、スーパーで売っているごく普通の唐揚げが、すごく上等な味わいに変わりました。
ローストビーフには「エマソルト WHISKY」を試してみました。単に塩の味をつけるだけではなくて、一般的な塩では表現できない奥行きのある味わいになりますね。
「エマドレ」の「カンパイポンズ」も素晴らしかったですね。野菜と鶏肉に「エマドレ」を和えていただいたのですが、まるでレストランにいるかのような味わいを演出してくれました。特に感心したのは、お酒が入っているような高級感ある味わいなのに、実際にはノンアルコールだという点ですね。
お酒を提供するバーの経営者が、お酒の良さをノンアルコールで楽しめる商品を作ろうと考えたわけです。その発想が素晴らしいですよね。
──Aperioの代表・中山祐子とは以前から親交があるそうですね。
はい、中山さんとは親しくさせていただいています。お互いの人生観や仕事に対する思いを共有し合える、とても大切な友人です。昼から話し始めて、気づいたら翌日の朝方まで語り合っていたこともあるくらい。
実は「エマソルト」と「エマドレ」は、企画から開発、そして商品展開に至るまで、すぐ近くで見てきました。だからこうして結果に結びついているのを見ると、とても刺激になりますね。私も紙加工という分野で何か新しいことができないかと常に考えているので、中山さんには本当に感銘を受けています。
──ありがとうございました。では最後に、今後の展望についてお聞かせください。
今は地域貢献にもっと力を入れていきたいと考えています。会社の前にある大きな公園を活用したコミュニティの場を作りたくて、地元の野菜販売やキッチンカーの誘致などを計画しています。
それと京都市南区の魅力を伝えるために、地域のお店や会社を掲載した地図を作成し始めました。他にもYouTubeで配信したり、一日観光ツアーなどを企画して魅力を伝えていきたいですね。南区が京都のディープな観光地になったら嬉しいです。
最近うちのショップで、コーヒーをお出しできるようになったんです。2年後くらいには、地域の皆さんや海外からのお客様が、私たちのコーヒーを飲みながら公園で談笑する光景が見れたらいいですね。