
銭谷 裕志 氏インタビュー | ドレッシングのギフトは京都祇園のエマドレ | Shop Aperio">
京都で代々続く農家で、伝統野菜「金時人参」の栽培を手がける銭谷裕志氏。昔ながらの栽培方法にこだわりながら、代々受け継いできた「家種(いえだね)」を守り続けている銭谷さんに、農業にかける思いと、「エマドレ」で開発されたばかりの金時人参ドレッシングについて語っていただきました。
──大学時代はどのように過ごされたのか聞かせてください。
農家の家に生まれましたので、いずれは農業を継ぐんだろうなとぼんやり思いながら過ごしてきました。大学受験をするにあたっては経済学部か経営学部を受験することにしました。農家を自営するときに活かせることもあるだろうと。
最終的に経済学部に進学しました。学生時代は北大路のショッピングモールでキッチン用品販売のアルバイトをしていたんですが、その仕事がすごく楽しかったんですね。接客という仕事が肌に合ってたこともありますし、スタッフのシフトを組んだりだとか、通常であれば社員さんがやるようなところまで任されていたことで、とてもやりがいを感じていました。
──大学を卒業してから就農を決意するまでの経緯を教えてください。
大学を卒業したあと、ちょうど就職難の時代だったこともあって、アルバイトをしていたキッチン用品店で半年ほど契約社員として働き始めました。しかし、給料もアルバイト時代とほとんど変わらず、このまま働き続けることに疑問を感じてしまったんです。それで父に相談をしまして、本来は会社員としてある程度経験を積んでから農業をと考えていたんですが、前倒しで就農させてもらうことになりました。
──お父様の反応はいかがでしたか?
父親としては、そんな早くに就農してほしくなかったんじゃないかと思いますね。父は農業系の高校を出てからずっと農業をやってましたので、その大変さは身に沁みていたはずですから。農業はどうしても相場に左右されてしまいますし、まずは決まった給料がもらえて安定している会社員として働いて、その後のことはゆっくり考えていけばいいというつもりだったと思います。父は2年前に亡くなってしまったので、本当のところは確認しようがないのですが。
──お父様が亡くなってからはお一人で農業を続けているそうですね。
はい。父が亡くなってからは一人でやっています。一緒に畑に出ていたとき、父は全部自分でやりたいタイプの人だったので、私にはあまり仕事を任せてくれなかったんです。ですから、自分がやりたいようにできないことにストレスを感じていたところもありました。今は完全に一人なので自由にやれるようになったんですが、その反面、私自身に何か急用が入ってしまえば畑作業が完全にストップしてしまうわけです。そうならないように段取りを組む大変さを実感しています。
他にも、例えば収穫した壬生菜(ミブナ)の枯れた葉を取り除く作業なんかも、当然すべて自分一人でやらなければいけません。家族で農業を営んでいるところであれば、みんなで囲んで一斉に処理することができるんですけど、私の場合は一人ですから。時々心が折れそうになりながら、日々仕事をしているという感じですね。
今後は人を入れることも考えなければいけないなと思っているところです。とはいえ、私は人に仕事を振ることが苦手でして……結局そのあたりは父と似ているんでしょうね。困ったもんです。
──銭谷さんの金時人参の特徴を教えてください。
うちは自家採種した家種を受け継いで使っています。一般的に売ってる金時人参には胴が細くて長いイメージがあると思いますが、うちの金時は胴が太くて短いんです。なので、金時人参に多い型抜きなどの料理には使いにくいところはありますが、その代わり柔らかさとか、味の濃さとか、料理に映える赤色であったりとかは、市販されている金時人参には負けないと思っています。
多くは京都の市場とJAに卸していますが、特徴的な味を個別に直接注文をいただくことも少なくありません。お取引先としては料亭さんが多いですね。下鴨や祇園にあるお店とお付き合いさせていただいています。
銭谷さん自慢の金時人参は、柔らかくて味が濃く、料理に映える
──家族はどんなふうに応援してくれていますか。
妻は働きに出ているんですが、私の「監督」としていろいろな意見をくれるので助かっています。畑が忙しい時期になるとどうしても家事や育児で負担を掛けてしまいがちになるので、そこはどうにかしなければと思っていますね。
二人の娘にも力をもらっています。金時人参を触ってると手が黄色くなって、人参のにおいがするんですね。なので金時の時期になると、子どもたちが「いいにおいがする」って寄ってきてくれるんです。それはもう、すごくほっこりする瞬間ですね。
愛する家族との時間は心をほっこりさせてくれる
──「エマドレ」に銭谷さんの金時人参をご提供いただきたいという話がきたときはどう感じましたか。
JA京都市のサイトに私の取材をしていただいた記事が出ているんですが、それを見たAperioさんが声をかけてくれたという経緯ですね。私自身の背景であったり、自家採種の金時人参を取り扱っているといったところに興味を持っていただけたのが嬉しかったです。
農家の私としては、京野菜でドレッシングセットを作るという発想自体がなかなか出てこないんです。どういったコンセプトで思いついたんですか?
──金時人参ドレッシングを思い立ったきっかけは、コロナ禍での新たな挑戦として始まった「お酒の味がするドレッシングの開発」から、自然な素材を使った商品開発へ転換したことです。そこから地元の京野菜を使用したドレッシング開発を思いつき、お声がけをしたという経緯です。
そうだったんですね。私としては初めての取り組みだったこともあり、商品完成に至るまですごく楽しかったです。完成したドレッシングをいただいたんですが、味もすごく美味しかったですね。金時人参を使った商品としてとてもよくできていました。
Aperioさんはフットワーク軽く畑にも足を運んでくださったりしますし、ビジネスパートナーとして信頼できる方々だと感じています。
Aperioの新商品「エマ・カクテルドレッシング 金時にんじん」
金時にんじんの割合は全体の50%以上で、味・香り・発色が強く際立っています
さっぱりとしたサラダにも、濃厚な味と彩りを楽しめます
──ありがとうございました。では最後に、今後の展望についてお聞かせください。
うちが自家採種してる家種の人参を、ぜひたくさんの方に作ってほしいですね。私のところは娘が二人ということもあり、農業を継いでもらうのは難しいかもしれないと思っています。いろんな人に作ってもらうことで、父から受け継いだこの味を広めていきたいですね。
それと、今回のようなお話をいただけるのって、不思議と金時人参をやっている時期だけなんですよ。私にとってはかけがえのない大切なものなので、いただいたご縁を大切にしながら、後世につなげていけるように頑張っていこうと思っています。
京都の伝統とモダンが融合したドレッシングで、普段の食卓をより豊かにしてみませんか?
銭谷 裕志
Yuuji Zenitani
大学卒業後、キッチン用品販売の経験を経て就農。京都で代々続く農家で、春夏にキャベツ、秋冬は金時人参を栽培。自家採種の金時人参を昔ながらの手法で生産している。