
伊藤 美雪 氏インタビュー | ドレッシングのギフトは京都祇園のエマドレ | Shop Aperio">
京野菜の素材を生かしたAperioの新しいドレッシングシリーズ「エマ・カクテルドレッシング」の開発を担当したのは、管理栄養士の資格を持つ伊藤美雪さん。食品メーカーでの研究開発職を経て、現在はフリーランスとして活躍しています。独自の商品開発アプローチと、管理栄養士としての専門知識を活かして幅広く活躍する伊藤さんに、キャリアの変遷や、エマ・カクテルドレッシングの開発秘話について語っていただきました。
──学生時代のことや、栄養学との出会いについて聞かせてください。
私が栄養学や食品に関する勉強を志したきっかけは、学生時代に打ち込んでいた剣道にあります。地元では強豪校と言われる学校の剣道部に在籍していたのですが、トップレベルの中で戦うには筋力トレーニングや練習だけでは足りませんでした。食事も変える必要があるのではと考えるようになったんです。実際に書籍を買ってスポーツ栄養について学び始めると、筋肉の付き方や日頃のパフォーマンスが向上していきました。食事を変えた効果を実感するにつれて、どんどん栄養学にのめり込むようになりました。
大学は栄養士の資格が取れるところを選んだのですが、将来的にどの道に進むのかは決めかねていました。給食の献立作成を担当する栄養士、病院での栄養指導、研究職や商品開発といった分野……様々な選択肢で悩んでいたんです。でも食についてより深く学び、科学的な側面や機能性について理解を深めたいという思いから、2年生のときに農学部への編入を決意し、食品の機能性について研究しました。
──大学を卒業したあとは食品メーカーに就職されたんですね。
将来は食品メーカーでの研究職や商品開発の仕事に就きたかったので、就職活動も食品メーカーに絞りました。でも新卒で入社した就職先では、希望は叶わず、開発部ではなく製造部に配属となってしまいました。配属された先では、食品製造工場内での品質管理や生産工程の改善などを担当しました。当時は希望する仕事ができない状況を少しネガティブに捉えてしまっていましたが、今振り返ると、この時期に真摯に取り組んだ経験が大きな糧になっていると思います。
その後、商品開発の仕事で冷凍食品を海外で生産する機会を得ました。実際には日本で販売する商品ですが、製造はタイ、ベトナム、中国などの海外工場で行っていました。開発の仕事のひとつとして工場で事前にテスト生産をする必要がありますので、当時は海外に頻繁に行っていましたね。現地の方々とは、なかなか最初はすぐに心を開いてもらえなかったり、こちらの要望が聞き入れられないこともありました。また、どうしても味覚の違いがあって、現地に試作を依頼しても日本人向けの味付けにすることが難しいこともありました。しかし何度も現場に足を運び、直接対面でのコミュニケーションを重ねていくことで、少しずつ信頼関係を築いていきました。とてつもなく大変でしたが、言語も文化も異なる中で協力して商品を作り上げた経験は、大きな自信になりました。
──管理栄養士の資格を取ろうと決めたきっかけは何だったのでしょうか。
結婚を機に東京に拠点を移し、商品開発ができる仕事を探して業務用の食品メーカーに転職しました。そこで病院や介護施設向けの商品開発に携わるようになり、取引先である病院の管理栄養士の方々と、専門的な議論ができる知識を深めたいと感じたんです。管理栄養士の国家試験に挑戦することを決意したものの、当時は国内外を飛び回る多忙な日々を送っていました。勉強時間を捻出するのが難しい状況でしたが、なんとか試験に一発合格することができました。
管理栄養士の資格を取ってからは、自分の能力や経験を十分に活かした仕事がしたいという思いが一層強くなっていきました。でも出産をしたことで、私の環境はまた大きく変わっていったのです。
──子育てとキャリアの両立について、どのような課題があったのでしょうか。
20代は目まぐるしく忙しい日々を過ごしましたが、出産をしたことで、30代からはどうしても仕事を調整せざるを得なくなりました。夫も多忙でしたし、双方の実家も遠方にあったので、いわゆるワンオペ育児の状態でした。そうなるとフルタイムでの勤務はどうしても難しい。でも、これまで培ってきた力を活かした仕事がしたい……そんなジレンマに苦しんでいました。
転機が訪れたのは、出産後に勤めていた会社でフリーランスとして働いている方と出会ったことでした。その方はプライベートも充実させながら、高度な仕事をこなし、会社と対等な関係を築いていました。その姿に、新しい働き方の可能性を感じ、自分の未来に光が差し込んできた気がしました。
すぐに直接お話を伺って、ビジネスマッチングサイトやクラウドソーシングサイトの存在を教えてもらいました。それからそういったサービスに登録をしたり、商談のときの話し方を訓練したり、展示会で営業活動を行ったり……少しずつフリーランスとしての活動を増やしていき、現在に至っています。
水尾の柚子、金時にんじん、京こかぶ を使った新しいドレッシング「エマ・カクテルドレッシング」
3つの京野菜のおいしさを最大限に引き出しました
──Aperioからレシピ制作の相談があったときはどう感じましたか。
Aperioさんからお声掛けいただいたのは、ちょうど商品開発の長期案件を探していたときでした。これまで会社員として商品開発に携わってきた中ではどうしても「コストダウンを」「添加物を使用してでも味を良くしたり、賞味期限の延長を」といった要望を受けることが多かったんですよね。でもAperioさんが大切にしていたのは「素材を生かした本当に良いものを作りたい」ということでした。そのコンセプトに惹かれて、即決でお引き受けしました。
──新しいドレッシング開発においての課題はどのようなものでしたか。
賞味期限の設定など様々な制約がある中で、特に経時変化に弱い食材の取り扱いが課題でした。味はもちろん、見た目への対応も必要でしたが、添加物の使用は極力控えてほしいというご要望でしたので、素材本来の色と風味を保ちながら保存性を確保することに苦心しました。
──それぞれの商品について、開発秘話や特徴をお聞かせください。
まず「エマ・カクテルドレッシング」の全シリーズ共通のコンセプトとして、祇園のバーが作っているドレッシングなので、「カクテルをイメージしたドレッシング」ということで味のイメージを膨らませていきました。全体的に、野菜と果物の果汁をベースにして、フルーティーさを出しながらもドレッシングとして美味しいものに仕上げました。
その上で、「エマ・カクテルドレッシング 金時にんじん」は、自然の甘さが引き立つように工夫しました。素材の個性を活かすため、あえて粗めの食感を残しています。完全なピューレ状では味わいがすぐに消えてしまいがちでしたが、適度に粗く粉砕することで食感が残り、味わいがより長く感じられるようになっています。
京都上鳥羽の金時にんじんドレッシング
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銭谷さんの金時人参は、先祖伝来の家種を伝統的な栽培方法で育てています。
「エマ・カクテルドレッシング 京こかぶ」を作るにあたっては、特に他社さんのかぶドレッシングも研究したのですが、あまりかぶ本来の味わいが感じられず、酸味や香辛料が強調されすぎている印象を受けました。そこで、かぶの味わいをしっかりと感じられるドレッシングを目指しました。千枚漬けのような程よい甘酸っぱさが表現できていると思います。
京都京北の京こかぶドレッシング
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京都市右京区京北町で育った「京こかぶ」は、「京のブランド産品」にも選ばれている名品です。
「エマ・カクテルドレッシング ゆず」は当初、果汁だけで試作していたのですが、それだけでは柚子本来の良さが生かされず、何のドレッシングなのか判別が難しかったんです。そこで手間はかかりますが、柚子の皮を削って加えるようににしたところ、商品の印象が大きく変わりました。皮を加えることで適度な苦味が生まれ、鼻に抜ける柚子の香りが豊かになりました。
京都水尾地区の柚子ドレッシング
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知る人ぞ知る"柚子の里" 「水尾の柚子」を使っています。
──ありがとうございました。では最後に、今後の展望についてお聞かせください。
2024年からフリーランスとして仕事をしています。様々な企業様との商談を重ねる中で、業界における人材不足が深刻な課題だと感じています。せっかくの可能性や構想が、人材不足により具現化できないケースを多く目にしてきました。
私の強みは、企画から販促資料の作成、販売促進、品質管理のサポートまで、一貫して携われる点です。会社員の場合は所属企業の部署内に業務が限られますが、フリーランスとして私の専門性を活かし、全国の様々な企業様の課題解決のお手伝いができればと考えています。些細なご相談でも気軽にお声がけいただけたらうれしいですね。